芋虫のつぶやき
VOL39:(381〜390)

381「キバネツノトンボ」

後ろばねの黄色い余韻を残して、素早い動きで飛び回っていたのはキバネツノトンボである。太陽の光を浴びて前ばねがあちらこちらで煌き、初夏の草原はにぎ やかだ。

雌が飛んでいると雄が空中で絡み交尾を迫る、そんな場面を何回か見た。大半はうまくいかず飛んだまま分かれるが、たまたま成立した瞬間を目撃した。空中で 交尾した2匹はすぐに下草に降りて静止した。写真では上が雄と思われる。交尾時間は約3〜4分で、雄が急に動き始めて交尾を解き飛んでいった。雌は下草に 止まりしばらくは動かなかった。チョウなどに比べてかなり短い交尾時間であるが、これが正常な交尾であったかは分からない。

長い触角と大きな複眼、黄色と黒の脚がチャームポイントの可愛らしい虫である。

昨年の様子→ 355参照

写真:2005.5.22〜24 安曇野
写真1(キバネツノトンボ1)

写真2(キバネツノトンボ2)

写真3(キバネツノトンボ3)

写真4(キバネツノトンボ4)


382「ウスバシロチョウ」

ウスバシロチョウは、半透明の翅を持つ小型のアゲハチョウ。安曇野では5月中旬頃から出現し、林縁や河川敷などをふわふわとたおやかに舞 う。

チョウを追う者は、早春に出現するギフチョウやヒメギフチョウが一段落し、新緑を背景にウスバシロチョウが飛び交うようになると初夏を実 感する。春と夏をつなぐ風物詩ともいえるチョウなのである。

写真:2005.5.20〜29 安曇野
写真1(ウスバシロチョウ1)

写真2(ウスバシロチョウ2)

写真3(ウスバシロチョウ3)

写真4(ウスバシロチョウ4)


383「オオルリシジミ」

オオルリシジミの小気味良い飛翔が見られる季節になった。今年の観察で目を引いた点を二つ。

以前にも紹介したことがあるが、雄が翅を広げて尾端を上に持ち上げる「交尾拒否姿勢(交尾済の雌に見られる行動)」をとり、雌と間違えた 他の雄が交尾しようと迫る、という場面を4回ほど目撃した。ときには1匹の雄(交尾拒否姿勢)に2匹の雄が交尾しようとしていたケースも あった。腹部を精一杯曲げて交尾しようとする雄には、目の前の雄がどうしても雌に見えるらしい。なぜだろう。

もうひとつは早朝の交尾である。午前7時20分から30分間に4例の交尾を確認した。この日は朝から好天で、交尾のカップルに複数の雄が ちょっかいを出す姿もあった。果たして朝方に交尾が多い傾向があるのか、今後も注目したい。

写真:2005.5.28〜29 安曇野
 写真1.2は雄同士の配偶行動
写真1(オオルリシジミ1)

写真2(オオルリシジミ2)

写真3(オオルリシジミ3)

写真4(オオルリシジミ4)


384「トラガ」

この日、新鮮なトラガを3匹目撃した。そのうちの1匹は羽化直後で、枯れ木に止まって翅を伸ばしていた。周囲にはヤマガシュウ(ユリ科)が生えており、こ れを食べて育ったと推察される。

もう1匹はアカツメクサに止まって、まだ広がらない新葉にストロー(口吻)を挿し何かを吸っている。どうやらアブラムシの分泌物だったようだ(写真2・3)。

トラガは昼間飛ぶガで、黄色と黒の目立つ色彩をしている。まるでチョウのようである。

写真:2005.5.28 安曇野
写真1(トラガ1)

写真2(トラガ2)

写真3(トラガ3)


385「エゾヨツメ」

エゾヨツメは春に出現するヤママユガの仲間で、名の由来となった四つの目玉模様がトレードマークである。目玉をあしらったガは他にも何種 か見られるが、瞳の美しさという点でエゾヨツメに勝る種は少ないだろう。

若齡幼虫時代から、棘のある長い突起を身につけ、四方に睨みをきかせている。これでよく体のがバランスがとれるものだと感心してしまう。 いかめしい突起も、見かけ倒しのやさしい武器なのである。

写真1:2005.6.1 松本市 
写真2.3:2005.5.28 安曇野
写真1(エゾヨツメ)

写真2(エゾヨツメ幼虫1)

写真3(エゾヨツメ幼虫2)


386「ヒオドシチョウ」

ヒオドシチョウの雌が食樹のエノキ(ニレ科)に産卵をしていたのは、4月30日のことである。まだ芽吹き前の枝先には、ボールのような卵 塊がつくられていた。その中に色味の違う卵があることから、先に産み付けられてあった卵塊の上に、重ねるように産卵していることが分かる。 そのすぐ下の新芽にも1卵塊あり、今回のものも含めると、少なくとも3回分の卵塊がここに集中していて、他の枝にはまったく見られない。

母チョウは、いくつもの枝先に止まりながら、気に入った産卵場所を吟味する習性がある。しかし、数ある枝のうち、たった1ケ所だけに固執 する理由は何だろう。もしかしたら同一の母チョウなのだろうか。

6月1日、発生樹を訪ねてみると、卵塊のあった枝(写真4の○内)の周囲は葉がなく丸坊主になっていた。ヒオドシチョウの幼虫はすでに4 齡ほどに成長し、黒い集団をつくって旺盛な食欲を見せていた。

写真1.2:2005.4.30
写真3.4:2005.6.1
いずれも県営烏川渓谷緑地
写真1(ヒオドシチョウ1)

写真2(ヒオドシチョウ2)

写真3(ヒオドシチョウ3)

写真4(ヒオドシチョウ4)


387「オオヒカゲ」

7月も半ば近くなった。スゲ類の茂る湿地付近では、オオヒカゲの成虫をたくさん見ることができた。その中で目を引いたのは、鳥についばま れたと思われる跡を持つ成虫を2匹確認したことである。いずれも後翅の「目玉模様」付近が鳥の口ばしの形に破れていた。

チョウは前翅が破損すると飛翔に支障がでるが、後翅は破れても飛べなくなることは少ない。この2例を見る限り、天敵の鳥にニセの目玉を食 わせて致命傷を回避し、後翅の破損だけで逃げるというオオヒカゲの戦略が功を奏しているように思える。

写真1.2:口ばし型の破損を持つオオヒカゲ2例
写真3〜4:吸水などで集まる成虫
いずれも2005.07.10 安曇野
写真1(オオヒカゲ1)

写真2(オオヒカゲ2)

写真3(オオヒカゲ3)

写真4(オオヒカゲ4)


388「ベニモンマダラ」

派手な衣装で草原を飛んでいたのは昼行性の蛾、ベニモンマダラである。真紅の斑は翅だけでなく胴部にも及び、「ワタシはここにいるよ」とば かりに、辺りにその存在を主張してはばからない。

こうした強烈な色彩は、「食べるとまずいよ」ということを天敵である鳥などに認識させるのに有効といわれ、「警告色」と呼ばれる。隠遁の 術である「保護色」とは対照的な戦略といえるだろう。

この日生息地を訪れると、産卵するメスに出会った。食草であるクサフジの葉裏に丹念に産み付けていた。さすがに真紅の翅の色も褪せかけて いて、その役割も終わりつつあるようだ。

写真:1.2.4 2005.07.14
写真:3 2005.07.03
写真:5 2005.07.15
いずれも安曇野
写真1(ベニモンマダラ1)

写真2(ベニモンマダラ2)

写真3(ベニモンマダラ3)

写真4(ベニモンマダラ4)

写真5(ベニモンマダラ5)


389「初夏のトンボたち」

訪れた山中の小さな池は、トンボたちで賑やかだった。親分格は唯一のヤンマであるクロスジギンヤンマで、池を周回しながら縄張りのパトロー ルに余念がなかった。交尾する瞬間に出会ったが、なかなか迫力があった。雄は上空から急襲して雌を水面に押さえつけ、水しぶきをあげなが ら絡んだのである。水面を叩く大きな羽音が静かな池に響いた。

ヨツボシトンボは陣地の見張りに熱心で、侵入者が近づくたび緊急発進を繰り返していた。対してコサナエは、水際を時にホバリングしながら 静かに飛んでいた。サナエトンボは「早苗蜻蛉」で、初夏に似合ったネーネングである。

エゾイトトンボは美しい青色が特徴。数も多く、青色の小さなステッキが飛んでいるように見える。「トンボ」の語源には「田んぼ」「飛ぶ棒」 などの説があるが、エゾイトトンボのステッキはまさに「飛ぶ棒」にぴったりではある。(2005.6.21記)

写真1:クロスジギンヤンマ 
写真2:ヨツボシトンボ
写真3〜4 コサナエ 
写真5〜6エゾイトトンボ
撮影 2005.6.11安曇野
同定協力:枝 重夫先生
写真1(クロスジギンヤンマ)

写真2(ヨツボシトンボ)

写真3(コサナエ1)

写真4(コサナエ2)

写真5(エゾトンボ1)

写真6(エゾトンボ2)


390「ラミーカミキリ」

木曾谷を訪れたときのこと。虫友の中田君がカラムシに付くラミーカミキリを見つけた。数も相当多い。

カミキリ界の中でも美虫として知られ、響きのよいネーミングも手伝って人気のあるカミキリである。ラミーは「ラミー麻」としても知られる イラクサ科の植物。そもそもラミーカミキリは、大陸から輸入されたラミーに付いて日本に入り帰化したといわれる。

日本ではラミーに替わりカラムシなどに付く。カラムシも古来繊維を取るために使われてきたイラクサ科の植物である。

暖地系の種なので長野県にはいなかったと思われるが、温暖化などの影響も手伝ってか列島を北へと分布を広げている。近いうちに安曇野周辺でも 見つかるかもしれない。

写真:2005.07.16 木曾谷
写真1(ラミーカミキリ1)

写真2(ラミーカミキリ2)

写真3(ラミーカミキリ3)



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