芋虫のつぶやき
VOL36:(351〜360)

351「ジョウザンミドリシジミ」

ミドリシジミ類の雄の中には、強い占有行動(縄張り)をもつものがいる。見通しのきく梢の先の葉に翅を広げて止まり、エリア内に入ってくる虫が あれば素早く飛び立ち激しく追い立てる。相手が自分より大きなチョウなどであっても、おかまいなしである。

相手が縄張りから出て行くと、同じ場所に舞い戻り、ササッと葉先に進み出て再び見張りを始める。その青く光る翅を際立たせて‥。

写真:2004.7.4 東筑摩郡
写真1(ジョウザンミドリシジミ1)

写真2(ジョウザンミドリシジミ2)

352「クロメクラアブ」

腕の血を吸うクロメクラアブの目があまりに綺麗だったので、痛痒さを我慢してカメラを向けた。夕方であったため被写界深度が浅く、目だけ が強調された写真になってしまったが、見れば見るほど面白い配色である。

一体この目には、どのように世界が映っているのだろうか。

写真:2004.6.26 高遠町
写真1(クロメクラアブ)

353「ムカシヤンマ」

枝 重夫先生にムカシヤンマの生息地をご案内いただき、その不思議な生態の一端を垣間見ることができた。

そこは水が染み出た垂直に近い崖面で、ムカシヤンマの幼虫は、コケに穴をあけてその中に潜んでいた。巣穴の周囲には掘り出した泥があり、 それが幼虫を探す目安となった。

ムカシヤンマは原始的な形態を残すトンボで、幼虫期は6年ほどといわれる。一体、どのようにして餌をとるのだろうか、どのくらい移動をす るのだろうか、垂直面を利用するメリットは何だろうか‥。疑問が次々と湧いてきた。

写真1:ムカシヤンマ♂ 
 2004.6.24 安曇野
  写真2:ムカシヤンマ幼虫
 2004.6.16 北安曇郡
写真1(ムカシヤンマ♂)

写真2(ムカシヤンマ幼虫)


354「アナグマ」

ヒューム管を覗くと、その横穴からこちらを窺う生き物と目が合った。気配を感じると奥へ引っ込むものの、しばらく経つと、また鼻と目を覗 かせる。どうやら逃げるつもりではないらしい。

そこで、腕を伸ばしてコンパクトデジカメを横穴方向に向け、ストロボを発光さてシャッターを切った。

おびえたような格好でモニターに写し出されたのは「アナグマ」であった。アナグマは巣穴を作ることで知られるイタチ科の動物である。ムジ ナとも呼ばれ、タヌキと混同されることも多い。

アナグマは相当の土を掻き出して巣穴を作る。だがこの、「穴の主」ならぬ「管の主」はどうだろうか。よもや野生を忘れてヒューム管で暮 らしているとは思いたくないのだが‥。

写真:2004.7.18 安曇野
参考文献:哺乳類観察ブック 人類文化社
写真1(アナグマの棲家1)

写真2(アナグマの棲家2)

写真3(アナグマの棲家3)


355「キバネツノトンボ」

6月中旬、キバネツノトンボの母虫が腹部を交互に動かしながら、枯れた草本の茎に卵を丁寧に産みつけていた。その後、きれいに並んだ卵の 列がいくつも見られたのはついこの間のことだ。

この日、止まったままでカビにおかされ死んだ成虫と、孵化後、集団を作っている幼虫を見つけた。世代交代は静かに行われ、母虫は子供たち の誕生を見届けることはないが、自然界の無常を感じずにはいられない。

キバネツノトンボは、アリジゴクで知られるウスバカゲロウの近縁である。鋏のような大きなあごを持つ幼虫の姿はよく似ている。

写真1:2004.6.10  
写真2.3:2004.7.18
 いずれも安曇野
写真1(キバネツノトンボ1)

写真2(キバネツノトンボ2)

写真3(キバネツノトンボの幼虫)


356「ツマグロヒョウモン」

久しぶりにツマグロヒョウモンに出会った。2年前の春、三郷小学校の庭で越冬幼虫を確認して以来である。3年前には民家の庭先にも飛来す るなど、温暖化を背景に順調に分布を伸ばしていると思われたが、何かがブレーキをかけたようだ。

現在、三郷村内における幼虫発生の情報も届いている。この夏から秋にかけて南国色の飛翔が身近に見られるかもしれない。

写真:ツマグロヒョウモン♂
 2004.7.14. 明科町 
写真1(ツマグロヒョウモン1)

写真2(ツマグロヒョウモン2)

写真3(ツマグロヒョウモン3)

357「面白い芋虫たち」

7月の昆虫クラブの活動では、ユニークな芋虫・毛虫たちに出会うことができて幸せであった。

ことにシャチホコガの仲間は、その名のとおり「しゃちほこ」のように反り返った幼虫が多い。中には幼虫らしからぬ長い「脚」を持つものも いて、その特異性では他の芋虫を寄せ付けない魅力がある。

子供の一人が胸部の膨れた面白い幼虫を見つけた。寄生でもされているのかと思ったら、ほかにも見つかった。シャクガの幼虫と思われ、オニ グルミの葉を食べていた。

アケビコノハの幼虫は、そのグロテスクな容姿で人気が高い。同行のお母さんの中からは悲鳴に近い声もあがる。目玉模様の効果は大きいと実 感した。

写真1:2004.7.14 
写真2.3:2004.7.11
 豊科町
写真4:2004.7.19
 安曇村

参考文献:日本産蛾類生態図鑑 講談社

追伸:ガ類研究の宮田 渡先生より、不明シャクガの幼虫が「ヨツメエ ダシャク」である旨連絡を頂きました。ありがとうございました。
写真1(シロシャチホコの仲間の幼虫)

写真2(ギンシャチホコ幼虫)

写真3(シャクガSP幼虫)

写真4(アケビコノハ幼虫)


358「ヒメジャノメ」

ヒメジャノメはポピュラーなジャノメチョウのひとつ。水田周辺にも生息し、低く飛ぶため家の中に迷い込むこともしばしばだ。

この日、ヒメジャノメの産卵を目撃した。午後5時近く、雑草の茂みに雌が飛び込み、いきなり産卵を始めた。食草はシバ(イネ科)で、雌は 強い風に揺れる足場に苦労しながら6卵を産みつけた。産卵時間は約90秒であった。

写真1:2004.7.31堀金村 
写真2.3:2004.8.1豊科町
写真1(ヒメジャノメの交尾)

写真2(ヒメジャノメの産卵)

写真3(ヒメジャノメの卵)


359「ミドリシジミの産卵」

ミドリシジミの産卵を観察した。雌は渓流沿いに生えるタニガワハンノキの小木の枝を歩きながら、枝の分岐のひだに丁寧に産み付けていた。

数卵を産付後、葉に止まって小休止。広げた翅の青く輝く斑紋が美しかった。ミドリシジミの雌にはいくつかの斑紋パターンがあり、この雌はや や薄いが橙色(A型)と青色(B型)を併せ持っているので、橙紋藍紋型(AB型)と思われる。

写真:2004.7.31 安曇野
写真1(ミドリシジミ♀1)

写真2(ミドリシジミ産卵)

写真3(ミドリシジミの卵)


360「ナラエダムレタマフシ」

夕暮れ時、一本のコナラの中木にウラギンシジミが集まっていた。薄暗くなっても彼らの翅裏は白銀に光り、遠くからでもよく目立つ。
近づいてみると、コナラの枝にできた「虫こぶ」から分泌される蜜を求めて集まっているではないか。ざっと数えただけで15匹はいる。葉陰 に隠れたものも含めれば20匹以上はいるだろう。
蜜を分泌していたのは「ナラエダムレタマフシ」。ナラエダムレタマバチによって作られるという。以前ムネアカオオアリが群れていたことも あり、気になっていた虫こぶであった。
ウラギンシジミのほかにシロテンハナムグリやムネアカオオアリたちも集まっていた。蜜を出して虫たちを誘う「虫こぶ」の意図は何だろうか。

写真1〜3:2004.8.8南小倉 
写真4〜5:2004.5.14豊科町
5は虫こぶを割ったところ(幼虫が見える)

※虫こぶの同定は宮田 渡氏にお願いしました。
写真1(ウラギンシジミ1)

写真2(ウラギンシジミ2)

写真2(ナラエダムレタマフシ1)

写真2(ナラエダムレタマフシ2)

写真2(ナラエダムレタマフシ3)



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