芋虫のつぶやき
VOL34:(331〜340)

331「セツブンソウ」

安曇野でも気温が18度近くまで上がり、4月中旬の陽気となった21日、毎年、春の進捗度をはかる目安としているセツブンソウの開花状況 が気になり自生地を訪れた。

案の定、日当たりの良い一角では、先駆けとなる花が咲き出していて、春の訪れを感じさせるには十分であった。

花から花へとせわしく飛び回る小型のハチが目に留まった。ニホンミツバチと思われた。以前からセツブンソウのポリネーター(花粉を媒介す る昆虫)が気になっていたので嬉しい収穫であった。

写真:2004.2.21 安曇野

◇立体写真の見方
立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの写真が中央で合体すると飛び出して見えます
写真1(セツブンソウ)

写真2(ニホンミツバチ)

立体写真(セツブンソウ)


332「カナダヅル」

ここ2週ほど、週末になると豊科町の白鳥池を訪れている。目的は珍客として話題となっているカナダヅルで、聞くところによると一生に一度 会えるかどうかというくらい稀な飛来というから虫屋とて気になる。

川岸には驚くほど大勢のギャラリー集まっていた。カナダヅル人気が拍車をかけているのだろう。メガホンのような望遠レンズを付けたカメラ を構えた人たちに交じって、コンパクトデジカメをツルに向けるが、悲しいかな豆粒にしか写らない。情報をくれた友人のN氏が来たときには 目の前にいて撮りたい放題だったというのに、私の来るときはいつも遠い中洲で餌をついばみそっけない。

コハクチョウたちが飛び立つ練習に余念がなかった。旅立ちの時期も近いのだろう。

写真:2004.2.22 豊科町
写真1(カナダヅル)

写真2(コハクチョウ)


333「スミナガシの蛹」

松本市島内のT先生宅で、スミナガシの蛹を撮影する機会を得た。これまで飼育の末に得られた蛹は見てきたが、自然状態のものは初めて である。

スミナガシはタテハチョウの仲間であるが、その生態は実に奇抜で面白い。例えば、終齢幼虫は体に穴のあいたような彩色と、大きな角のある 頭部が特徴。蛹に至っては、枯葉そっくりで虫食いの穴までつける念の入れようである。

蛹は地表近くの倒れた草本の茎についていた。蛹の周りに積もった枯葉と完全に同化していて、指し示してもらわない限りその存在に気づくこ とは難しいと思った。先生の観察によると、自らこの場所を選択して蛹化したとのことであった。

これまで食樹(アワブキ・ミヤマハハソ)周辺で幾度となく蛹を探してみたが、「枝に付く一枚の枯葉」のイメージが強かったため、地表近く には注目してこなかった。蛹は地表にあふれる枯葉の中に紛れたほうがカムフラージュの効果が高い。考えてみれば至極当然のことであった。

写真1.2:2004.3.14 松本市
写真3:2003.7.20安曇村

◇立体写真の見方
立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの写真が中央で合体すると飛び出して見えます
写真1(スミナガシ蛹)

写真2(スミナガシ幼虫)


写真3(立体写真:スミナガシ蛹)


334「陽だまりの蝶たち」

アルプスから吹く風はまだ冷たいが、里山では虫たちの元気な姿を見ることができる。ことに、南向きで風が当たらない傾斜地周辺の陽だまり には、成虫で越冬したチョウたちが集まってくる。そして、地表に舞い降りると、おもむろに太陽に向けて翅を広げ、日光浴に余念がない。

新成虫の頃はあまり翅を開かないテングチョウも、越冬を終えたこの時期にはよく翅を広げる。この日はナズナの花の蜜をうまそうに吸ってい た。

写真1:テングチョウ 
写真2:キタテハ 2004.3.21 堀金村
写真3:ヒオドシチョウ:2004.3.14 堀金村
写真1(テングチョウ)

写真2(キタテハ)

写真3(ヒオドシチョウ)


335「ヒオドシチョウの交尾」

「森倶楽部21」の皆さんのお誘いを受け明科町を訪れた。森倶楽部の「チョウの棲む森づくり」の実践は2年が経過し、手入れの行き届いた 林には春の陽光があふれていた。

空間のある林内ではヒオドシチョウの交尾が観察できた。また、ミズイロオナガジシミ・アカシジミ・ウラミスジシジミ・メスアカミドリシジ ミなどの越冬卵も見つかった。

森林に隣接するオープンランド(人手の入った、開けた草原的環境)では、ヒオドシチョウやキタテハ、テングチョウ・スジボソヤマキチョウ が盛んに飛んでいた。地面に舞い降りたスジボソヤマキチョウの雄雌が横倒しになって止まり、雄が後方から翅を震わせながら雌に近づこうと する求愛行動も観察することができた。

春の日差しの中に舞うチョウを見ながら、「チョウの棲む森づくり」の実践は、確かな歩みを続けていると感じた。

写真1:ヒオドシチョウ交尾
(改めて翅の裏が保護色だと認識した)
Am11:50頃 2004.3.28
 明科町 以下同じ
写真2:スジボソヤマキチョウ求愛行動
(手前が♀、後方が♂)まるで寝ているかのよう‥
写真3:「そのチョウが気になるの‥」
当日の一こま
写真1(ヒオドシチョウ交尾)

写真2(スジボソヤマキチョウ求愛行動)

写真3(そのチョウが気になるの‥)


336「春の訪れ」

ここ2日間、暖かい陽気が続いている。3日前には積雪となる寒の戻りがあったものの、春の訪れは確かな歩みとなって目に映る。

早咲きのサクラの中には満開となって咲き誇るものもある。ソメイヨシノも蕾がはじけそうなほど膨らんでいる。

山麓の林縁では春植物が花をつけていた。どれも清楚で美しかった。セリバオウレンの花はすでに終盤で、最盛期を逃したことが悔やまれた。

写真1:サクラと道祖神(三郷村中萱)
写真2:セリバオウレン
写真3:アズマイチゲ 
写真4:キバナノアマナ
(以上三郷村) 撮影2004.4.7 
写真1(さくらと道祖神)

写真2(セリバオウレン)

写真3(アズマイチゲ)

写真4(キバナノアマナ)


337「カタクリ受難」

昨日はほとんどが蕾だったカタクリも、今日はあちらこちらで可憐な花を広げていた。もう数日もすれば、林床はピンクの花のじゅうたんに 覆われることだろう。

しかし、残念なこともある。昨年にも増してカタクリの盗掘(正式には園芸採取というらしいが)が多いことだ。この場所でもざっと数えて30 箇所以上は掘られている。いずれも掘りっぱなしで埋め戻した形跡はない。

さらに今日は、毎年カメラを向けてきたキクザキイチゲの小さな群落もやられた。目撃者によると、採取していたのは練馬ナンバーの中高年女 性のグループで、逃げるように立ち去ったとか。

カタクリは、8年ほどの歳月をかけて花をつけると聞いたことがある。花を愛でる気持ちがあるならば、自然との付き合い方も見えてくると思 うのだが‥。

写真1:2004.4.10 写真2:2004.4.11 
写真3:2004.4.10 写真4:2004.4.11 
安曇野にて
写真1(カタクリ1)

写真2(カタクリ2)

写真3(カタクリ盗掘)

写真4(キクザキイチゲ盗掘)


338「ヒオドシチョウの産卵」

県営烏川渓谷緑地で、ヒオドシチョウの雌が産卵体勢に入っていた。母チョウは、3mほどのエノキの周囲を旋回し、枝先に軽く止まっては前 足をせわしなく枝に触れさせる。この行為により食樹を選別しているようにも見えた。この一連の行動は繰り返し行われていた。

この日は残念ながら、産卵にいたるまでを観察できなかったが、そのエノキの枝に、くす玉のような卵塊(らんかい)が付いていた。よく見る と左右で色が違って見える。同一の母チョウかは不明であるが、時を違えて2つの卵塊が付いていたのである。色の薄いほうが新しい。

他にも枝はたくさんあるのに、母チョウがこの枝に執着した理由はなんだろう。卵が産み付けられた枝は、高さが1mほどのところでで外へ大 きく張り出していた。その枝の周囲には、適度な空間が広がっていたので、産卵がしやすかったことは推察できる。

この翌日、新たな卵塊が2ケ所に付いていた。推定だが全部で350卵以上はあると思われる。この食樹の大きさでは、とても全部を賄えそう にない。

なお、この母チョウの産卵のシーンは、烏川渓谷緑地のホームページに掲載されている。
http://www8.plala.or.jp/fagus/

写真1:食樹を確認する母チョウ 
写真2:2つの卵塊
2004.4.17 県営烏川渓谷緑地
写真1(ヒオドシチョウ)

写真2(ヒオドシチョウの卵塊)


339「ゴミ拾い」

今年も三郷昆虫クラブに20名の子供たちが集った。この日が初の野外活動である。訪れたのは、烏川渓谷。カタクリの群生地を訪れ、春植物 やヒメギフチョウなどを観察する予定だった。

林床一面に咲くカタクリの群落には歓声があがったが、しばらくして落胆の声が‥。なんと大量のごみが投棄してあったのである。道路から斜 面へ次々と投げ捨てたものと思われた。

期せずして親子共同の清掃作業が始まった。県営烏川渓谷緑地のスタッフも駆けつけて、軽トラック一台分のごみが回収された。

活動に参加のF先生いわく、「よく、大人の捨てたごみを子供たちが拾って環境教育と言っているけど、おかしいよね」

まったくその通りである。

写真1:カタクリの自生地近くに捨てられたごみを拾う
写真2:集められたごみの一部
 2004.4.17 烏川渓谷
写真1(ゴミ拾い1)

写真2(ゴミ拾い2)


340「ヒメギフチョウ」

ヒメギフチョウは、「春の女神」とも呼ばれる可憐なアゲハチョウである。林床に降り注ぐ陽光を浴びながら、カタクリなど春植物の蜜を求 めて低く舞う。

一昨日にまとまった雨が降ったこともあり、木々も一気に若葉を広げてきた。陽光が落ち葉に照り、まぶしいかった林床は、徐々に影の色を濃 くしてきている。

山麓のカタクリは早くも終盤。ヒメギフチョウも色あせた個体が増えてきた。食草のウスバサイシンは葉を広げ、女神たちも慌しく産卵に臨んで いる。

ヒメギフチョウたちとの語らいもあと僅か。精一杯見届けたい。

写真1:2004.4.17 
写真2:2004.4.21 安曇野
写真1(ヒメギフチョウ1)

写真2(ヒメギフチョウ2)



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