304「ヒメシロチョウ」
安曇野から姿を消してしまったチョウのひとつにヒメシロチョウがある。体はきゃしゃで飛ぶ姿もどこか弱々しく、やさしい感じのするチョウで
ある。
先日、望月町の友人宅を訪ねた折、庭先の草地を飛ぶヒメシロチョウに出会い夢中でカメラを向けた。
以前は、あぜ道などに普通に見られたが、圃場整備事業の進展と共に姿を消してしまった。いたって身近なチョウだっただけに、寂しいかぎり
である。
ヒメシロチョウの食草であるツルフジバカマ(マメ科)は、今でもところどころで見かける。夏には紫の花を連ねて美しい。
写真1:クサフジの花を訪れたヒメシロチョウ (2003.8.24 望月町)
写真2:ツルフジバカマの花 (2003.8.16 堀金村)
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305「ヒョウモンチョウの産卵」
ヒョウ柄を斑紋に持つ、ヒョウモンチョウの仲間の産卵の時期となった。訪れたフィールドでは、ミドリヒョウモン・メスグロヒョウモン・オオ
ウラギンスジヒョウモン・ウラギンヒョウモンの雌たちが、産卵体勢に入っていた。
このうち、オオウラギンスジヒョウモンとウラギンヒョウモンについて産卵行動を観察することができた。両種の雌は産卵に際して、波打つよ
うな翅の開閉や、小刻みに震えたりする動作を繰り返す。やがて野面を低く飛び地面に降り立つと、歩きながら腹部を曲げて食草のスミレの生
える付近の枯葉や枯枝などに産卵してゆく。草の間を分け入ったりするが苦にする様子はない。4〜6卵程度を産み終えると飛び立ち、近くの
草本の葉で休み、波打つような開閉を始める。
オオウラギンスジヒョウモンは二匹の雌が産卵していたが、片方の雌は地表から15cm〜20cm程度の高さにあるキツネノボタンの葉や、草本に引っ
かかっていた枯葉にも産み付けていた。結構いい加減なものだと思った。
写真1:オオウラギンスジヒョウモン♀の産卵 (キツネノボタン)
写真2:オオウラギンスジヒョウモン卵 (キツネノボタン)
写真3:ウラギンヒョウモン♀の産卵 (周辺はノジスミレ)
撮影はいずれも2003.9.6 堀金村
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写真1
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 写真3

306「クロコノマチョウ」
年々、北へ向かって分布を広げている南方系のチョウ「クロコノマチョ
ウ」が三郷中学校で採集された。おそらく松本地方初の記録と思われる。
チョウを捕まえたのは、小学校6年生まで昆虫クラブに所属していた、
中学2年生の上田一裕君。理科室に迷い込んでいた個体を採集した。
クロコノマチョウは雄の夏型で、翅はかなり破損していた。近くで発生
したというよりも、遠方から飛んできたように思われる。上田君は「桃
のバタフライトラップを教室の外に仕掛けておいたので、匂いに誘われ
て来たのではないか」と話していた。
クロコノマチョウは、長野県には生息していなかったチョウであるが、
1978年以降、下伊那周辺で分布を拡大し、現在では中川村以南の県南部
にほぼ定着したという※。今後、安曇野周辺でもいっそうの注意が必要
であろう。
南方系のチョウとしては、すでにツマグロヒョウモンが身近となってい
て、三郷村では1995年以降、断続的に越冬が確認されている。これらの
チョウの「北進」の背景には、温暖化の影響が指摘されている。
写真1:クロコノマチョウ♂ 2003.9.3 採集地 三郷中学校
写真2:ツマグロヒョウモン♂2001.5.17三郷村役場
(※参考文献:長野県産チョウ類動態図鑑 1999)
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307「ハンミョウ」
ハンミョウは、色彩豊かな金属光沢をもつ美しい甲虫で、山道などで出
会うことが多い。まるで道案内をするかのように、前へ前へと跳ね飛ぶ
習性があり、「ミチオシエ」などと呼ぶ地方もある。
ハンミョウは「斑猫」と書く。外見はあまり猫に似ているとは思えない
が、強い大あごを持ち、俊敏な動きで小昆虫を捕食する「ハンター」で
あることが、漢字名の由来なのであろう。
写真:2003.9.12 堀金村
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308「サカイウツギ」
「サカイウツギ(境空木)」をご存知だろうか。文字通り境界の目印と
して植えられてきたウツギのことであるが、コンクリートの境杭だらけ
の現代においては、その出番があるはずもなく、消え行く安曇野の原風
景のひとつになっている。
先日、思いかげずサカイウツギが残る風景に出会った。手入れがされた
ウツギの株は、まるで枝を束ねたように見えた。
ウツギは垣根などにも利用され、花は「卯の花」として親しまれた。枝
は、桐箱作りの木釘や、子供のおもちゃの笛などに使われた。
最近の緑化は、やたらと外来種などを持ち込む傾向があるが、こうした
郷土の自然や文化も参考にしてほしいものである。
写真1:2003.9.12 堀金村
写真2:2003.6.12 堀金村
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309「燈取蛾」
ヒトリガ(燈取蛾)は、独特の模様を翅に描いていて、昼間見かけるも
のはたいがい、翅を屋根型にたたんで草木の葉に止まっている。
蛾に触ると、意外や簡単に地面に落ちてしまう。そして、翅をひろげ下
翅の紅色の地に描かれた目玉模様や、首の付け根の真っ赤な毛を見せつ
ける。一瞬の変化で警告色を際立たせ、天敵を驚かす戦法であろう。何
かに似せているのかも知れないとあれこれ考えたが、これというものが
思い浮かばない。
幼虫は「クマケムシ」などと呼ばれ、春以降、道をせわしく歩く姿をよ
く見かける。
写真:2003.9.15 堀金村
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310「堰を彩る花々」
安曇野も日ごとに秋の色を深めている一方で、ツリフネソウやミゾソバ、
アキノウナギツカミなどの野草たちが、赤やピンクの花を咲かせて堰
(せぎ)を彩っていた。
しばらくの間、その場にたたずみせせらぎの音に耳を傾けた。なんとい
う心地よい響きだろう。子供の頃、毎日のように遊んだ風景が懐かしく
思い出された。
写真:1 ミゾソバ 2003.9.12
写真:2 アキノウナギツカミとツリフネソウ2003.10.4
写真:3 アキノウナギツカミ2003.10.4
いずれも堀金村
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