芋虫のつぶやき
VOL30:(291〜300)

291「スジボソヤマキチョウ」

山道を登っていくと、スジボソヤマキチョウの黄色い集団が目を引いた。30匹以上はいるだろうか。湿地に止まり無心に水を吸っていた。

このチョウの特徴の一つは、飛ぶとき以外、めったに翅を広げないことである。頑ななまでに閉じていて、美しいクリームの翅表を披露しない のは残念というほかはない。

写真1:2003.6.27 豊科町
 飛翔する黄色い個体は雄、白っぽいのは雌
写真2:2003.6.29 明科町
 吸水しているのは全て雄
写真1(スジボソヤマキチョウ1)

写真2(スジボソヤマキチョウ2)


292「オオツノトンボ」

先日の新聞に、「珍種オオツノトンボ ××で発見」という記事が載っていた。そういえばツノトンボの仲間は、これまでにもたびたび新聞紙 上に登場してきたが、発見した人のコメントはだいたい、「角のある見慣れないトンボだと思った」という趣旨のものである。

オオツノトンボは、アリジゴクで知られるウスバカゲロウと近縁の虫で、トンボの仲間ではない。しかし、見た人がトンボを連想するのは共通す るところで、ツノトンボの名前は的を得ているといえよう。

オオツノトンボが属するアミメカゲロウ目には、カマキリモドキという、カマキリそっくりの虫もいるので紹介しておきたい。

写真1:2003.6.29
 羽化直後のオオツノトンボ 豊科町
写真2:2003.6. 7
 キバネツノトンボ     堀金村
写真3:2002.8.30
 キカマキリモドキ     三郷村
写真1(オオツノトンボの羽化)

写真2(キバネツノトンボ♀)

写真3(キカマキリモドキ)


293「スズメガ」

先日、明科町の山中で行ったライトトラップに集まった蛾のうち、スズメガの仲間は4種類で、各々個性的なコスチュームがよく似合っていた。

スズメガの仲間は、とまるとちょうど戦闘機のような姿で、蛾類の中でもずば抜けた飛翔力を持つ。和名のスズメガはおそらく「雀蛾」であろ うが、英名の「Hawk Moth(鷹蛾)」のほうがよほど似合っている。

写真1:
左上 クルマスズメ
 右上 ビロードスズメ
    左下 エゾスズメ
  右下 ウンモンスズメ
写真2:エゾスズメ裏面
写真3:ライトトラップの様子
 写真はいずれも2003.7.12 明科町
写真1(スズメガ4種)

写真2(エゾスズメ裏面)

写真3(たくさん虫が集まってホクホク)


294「アサマイチモンジ」

山麓の林縁部などでは、アサマイチモンジをよく見かける。一時、近縁のイチモンジチョウが目立った時期もあったが、ここ数年、勢力を盛り 返しているように見える。

生息地では、食草のスイカズラ(スイカズラ科)への産卵や、若齢幼虫が観察できた。若齢幼虫は、葉の中脈を食べ残し、そこに静止する習性 があるため、発見は容易である。

写真1:
スイカズラの葉裏に産付された卵
 2003.6.30 堀金村
写真2:
葉上の若齢幼虫(おそらく1齢か
 脱皮間近と思われる)同上
写真3:
アブラムシの分泌物に集まる成虫
 2003.6.8 堀金村
写真1(アサマイチモンジ卵)

写真2(アサマイチモンジ幼虫)

写真3(アサマイチモンジ成虫)


295「季節外れのウスバシロチョウ」

7月20日、緑色に輝くミドリシジミの仲間を撮影しようと安曇村を訪れた。

撮影ポイントとなる林縁で私たちを迎えてくれたのは、季節はずれのウスバシロチョウの雌で、しかも新鮮な個体であった。梅雨寒の日が続い ているとはいえ、すでに7月も後半、5月を盛りに飛ぶチョウに出会うとは正直驚いた。

ゼフィルスはまだ時期尚早なのか姿を見せてくれなかったが、しばらく見かけなかったコキマダラセセリを見たのは嬉しかった。

写真1:ウスバシロチョウ♀(未交尾)
 写真はいずれも安曇村
写真2:コキマダラセセリ
(手前♂ 後方♀ 交尾後)

◆三郷昆虫クラブが平成15年度県知事表彰を受賞し、19日、クラブ長の丸山知裕君と信州環境フェアの会場で行われた表彰式に臨みました。 これも、暖かく活動を見守ってくださった多くの方々のお陰と深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
写真1(ウスバシロチョウ♀)

写真2(交尾後のコキマダラセセリ)

写真3(知事表彰)


296「夕焼け雲」

雨上がりの午後、風は強かったが空は澄み渡り、安曇平の隅々まで見通すことができた。雨に洗われた空気の中で、木々や草の緑色も一際鮮や かであった。

夕刻、雄大な夕焼け雲が出現し空を二分していた。まるで燃え盛る炎のようで、その迫力に思わず立ちすくんでしまった。

写真:2003.6.28 三郷村
写真1(夕焼け雲)

写真2(同)

写真3(同)


297「オオキンカメムシ」

オオイチモンジやヤリガタケシジミなどの、高山チョウを撮影する目的で上高地を訪れた。

途中から小雨がぱらつくあいにくの天候となり、目的は果たせなかったが、色彩豊かな昆虫や草花に巡り会い楽しかった。

オオキンカメムシは2pを超える大型のカメムシで、イタドリの葉裏に止まっていた。その鮮やかな朱色にしばし目がくぎ付けになった。暖地 系の種で移動性が強く、ときに北海道などでも見つかるというから驚きである。上高地で見られるのは稀なのではないだろうか。

コムラサキ雄は、青紫に輝く美しい翅を持つ。翅の角度によっては青紫色が消えてしまうため、カメラアングルには気を遣うチョウである。

写真1:オオキンカメムシ
写真2:コムラサキ♂
写真3:トモエソウ(立体写真)
撮影はいずれも2003.7.29 上高地

◇立体写真の見方
立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの 写真が中央で合体すると飛び出して見えます
写真1(オオキンカメムシ)

写真2(コムラサキ♂)

写真3(トモエソウ3D)


298「マエグロハネナガウンカ」

三郷村少年リーダー研修の自然観察会で不思議な虫を見つけた。体よりはるかに長い翅をV字のように立て、ひょうきんな面持ちでこちらを見 ていた。

図鑑で調べたところ、マエグロハネナガウンカと思われた。幼虫はキノコを食すという。

こんな翅で飛べるのかとつついて見たら、立派に飛び立った。どのように翅を動かすのかよく分からない。スローモーションで見てみたいもの だ。

写真:2003.8.5 高遠少年自然の家
写真1(マエグロハネナガウンカ)

写真2(同)


299「アカアシカスミカメ」

アカソ(イラクサ科)についていた虫二つ。

アカアシカスミカメは、アカソの花穂に集まっていた。アカアシ(赤足)よりも、翅の赤斑のほうが良く目立つしゃれたカメムシだ。

アカソの葉裏に付いていたのは、サカハチチョウの終齢幼虫である。サカハチは「逆八」の意で、夏に出現する成虫の斑紋から名づけられた。それ にしても、体をくねらせる理由がよく分からない。

写真は全て2003.8.10 島々谷

◇立体写真の見方
立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの 写真が中央で合体すると飛び出して見えます。
写真1(アカアシカスミカメ)

写真2(サカハチチョウ終齢幼虫)

写真3(ツリフネソウ3D)


300「ハネナガウンカ2種」

盆も終わりというのに、梅雨のような天気が続いている。農作物や自然界への影響が心配される。

この日、いつものフィールドを歩いてみると、新しい顔ぶれの虫たちが迎えてくれて、楽しいひとときとなった。

ススキの葉裏には、紅色の美しいアカハネナガウンカがよく見られた。どれも羽化後のようであった。漫画のようなひょうきんな眼が面白い。 通常、ススキなどのイネ科植物につくが、サトウキビに大発生することもあることから、農業害虫としても知られる。

カシグルミの幹にいたのは、クロフハネナガウンカと思われる。白い翅脈がなかなか綺麗であった。

写真:2003.8.16 堀金村
写真1(アカハネナガウンカ)

写真2(クロフハネナガウンカ)



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