芋虫のつぶやき
VOL29:(281〜290)

281「草原の虫」

ネグロクサアブは、ずんぐりとした大きな体が特徴のアブで、環境省のレッドデータブックにも登録されている。私自身、見かけるのは4回目 だが、なぜかいつも雌ばかりである。黙って止まっていることが多く、手で簡単に捕まるなど、アブらしいところを見たことがない。

キバネツノトンボは、黄色い翅を震わせて、草原をさっそうと飛び回る。日中は活発に飛ぶことが多いので、私は夕方生息地を訪れることにして いる。あまり暗くなければ、翅を広げている格好の良いポーズにも出会えるというものだ。

どちらの虫も、自然のよく残った草原を棲家としている。彼らの生きる環境そのものを大切にしたい。

写真1 :
ネグロクサアブ 2003.6.9
写真2.3:
キバネツノトンボ2003.6.7>BR> いずれも安曇野

◇立体写真の見方
立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの 写真が中央で合体すると飛び出して見えます。
写真1(ネグロクサアブ)

写真2(キバネツノトンボ♀)
写真3(キバネツノトンボ、3D写真)


282「スミナガシ」

タテハチョウの仲間のスミナガシが目の前に舞い降りた。いぶし銀を思わせる、しぶい光沢が美しい。スミナガシの名前も洒落ている。

幼虫は以前、「芋つぶ」で紹介したこともある、「体が空洞に見える」不思議な色彩をした芋虫である。食樹はアワブキ・ミヤマハハソ。

写真:
スミナガシ成虫 2003.5.25 堀金村
スミナガシ幼虫 2002.7.29 三郷村
写真1(スミナガシ成虫)

写真2(スミナガシ幼虫)


283「天空の蝶」

今年は、五月晴れと呼べる日がなく梅雨を迎えてしまった。雪形のしんがりを務める蝶ケ岳の「チョウ」の雪形も、その姿をはっきり見せるこ とのないまま、今は梅雨空の厚い雲の中に没している。

6月に入って2回ほど、霞む蝶ケ岳を撮影してみた。デジカメは、山と空の輪郭をなかなか探し出せず、ピント合わせに苦労した。画質を極度 に調整して、白いチョウがようやく現れた。

写真1 :2003.6.3 県営烏川緑地
写真2.3:2003.6.9 豊科町
写真1(蝶の雪形)

写真2(蝶ヶ岳の蝶の雪形)

写真3(蝶ヶ岳)


284「常念落日」

帰り道、西の空に沈む夕日に足を止めた。紅の陽光が常念岳の稜線を、静かに浮き立たせていた。

安曇野の主役を飾る、太陽のささやかな演出。そして、それを鑑賞できる喜び。

目の前を、スピードを上げた車が数台、通り過ぎていった。

写真:2003.6.6 三郷村
写真1(常念と夕日1)

写真2(常念と夕日2)


285「オオブタクサ」

河原を一面に覆うのは、オオブタクサ(別名クワモドキ 北アメリカ原産)である。三郷村の黒沢川流域でも、大きな群落をつくっている。密 生し、2〜3mにも成長するため、他の動植物への影響が心配される。

オオブタクサをかき分けて進んでいくと、茶色いチョウがあたふたと飛び出した。羽化したばかりのミドリヒョウモンの雄であった。

写真:2003.6.19 三郷村
写真1(オオブタクサ)

写真2(ミドリヒョウモン♀)


286「タケウチトゲアワフキ」

昆虫クラブの活動で見られたアワフキ2種

タケウチトゲアワフキは、なんとも奇妙な格好をした虫である。鋭くとがる突起を後方に伸ばしているが、何のためのものなのか皆目見当がつ かない。

ヤマブキの葉裏には、羽化したばかりのアワフキがとまっていた。色がまだ付いていなかったが、頭頂部が突き出る特徴から、テングアワフキ ではないかと思われた。

写真:2003.6.29 安曇村
写真1(タケウチトゲアワフキ)

写真2(テングアワフキ)


287「メスグロヒョウモン」

メスグロヒョウモンは、雄と雌とで翅の色や斑紋がだいぶ異なる。

他の大型ヒョウモン類のほとんどが、雄雌共にヒョウ柄を採用しているのに対し、本種の雌は、黒地に白い帯状の斑紋が特徴で、まるでイチモ ンジチョウの仲間のようである。

それでも、雌を追飛する雄を見ると、相手を間違えている様子はない。ここまで、変身をする理由は一体なんであろうか。

写真:2003.6.20 豊科町
写真1(メスグロヒョウモン1)

写真2(メスグロヒョウモン2)


288「ムラサキシャチホコ」

先日、三郷昆虫クラブ恒例の「昆虫合宿」が信州高遠少年の家で行われた。

今回出会った虫の中で、一番注目度が高かったのは、水銀灯の光に誘われて飛来したムラサキシャチホコであろう。その姿を見た参加者からは、 どよめきと喚声があがった。

このガは、シャチホコガの仲間で、枯葉に酷似した翅の斑紋が特徴である。写実的で、どう見ても本物の枯葉が丸まっているように見える。

この写真を見せた人からは、ガがいったいどのような状態なのかを問われ、説明に苦労した。ここは標本写真を見ていただくのが一番と気付いた。自然の芸術家の妙 をご覧いただきたい。

写真:1.2 2003.6.21 高遠町
写真:3 1996.6.12 堀金村
(協力 小野寺宏文氏)
写真1(ムラサキシャチホコ1)

写真2(ムラサキシャチホコ2)

写真3(ムラサキシャチホコ標本)


289「モノサシトンボ」

胴の部分が、ものさしの目盛りのように見えるイトトンボ。この時期、池や沼のほとりの草木に止まり、低く飛んでいる。

このトンボのチャームポイントは、6本の脚ではないだろうか。白く長めの脚は飛んでいても良く目立ち、まるで白いソックスを履いているよ うである。

写真:2003.7.5 穂高町
写真1(モノサシトンボ1)

写真2(モノサシトンボ2)

写真3(モノサシトンボ3)


290「オニヤンマの羽化」

オニヤンマの羽化に出会った。まだ、翅も半透明で、眼もあの透き通るような緑色ではない。

小川の周辺にはいくつかのヤゴ殻が付いていて、羽化の時期も終盤と思われた。中には水辺から2m以上離れたところに付いていた殻もあった。 これから夏本番。羽音を立てて勇壮に飛び回るオニヤンマを見る日も近 い。

写真:2003.7.5 堀金村

◇立体写真の見方
立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの写真が中央で合体すると飛び出して見えます
写真1(オニヤンマの羽化)
写真2(オニヤンマの羽化、3D写真)



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