芋虫のつぶやき
VOL28:(271〜280)

271「オオカメノキ」

雨が降る中、燕岳の登山口である中房温泉へ出かけた。奥山にはまだ残雪が点在し、芽吹きの木々や早春の植物に会うことが出来た。

中でも、オオカメノキは白く大きな花を咲かせていて、ちょうど見ごろとなっていた。一本の枝を手繰り寄せ、その花をゆっくりと見ることが 出来た。

小さな両性花の周りを、大きな装飾花が取り巻いている。そこに亀形の葉が寄り添い、まるで花束を枝に並べてつけたようである。

写真:2003.5.11 穂高町
写真1(オオカメノキ1)

写真2(オオカメノキ2)


272「ハヤシミドリシジミ」

五月中旬は、ゼフィルス(ミドリシジミの仲間)の幼虫も、終齢近くまで育つので幼虫観察の好期である。

この日、カシワやコナラ・クヌギなど、ブナ科の植物を中心に幼虫探しをしてみた。ゼフィルスの幼虫は、種類によって身の隠し方が異なるの で、葉だけでなく、枝や樹皮にも目を配る必要がある。

カシワを食樹とするハヤシミドリシジミは、写真のように開いた芽鱗を綴って簡単な巣を作り、自らも鱗片と化して潜んでいた。

今回は、ハヤシミドリシジミのほかに、ミズイロオナガシジミの幼虫をコナラの葉裏で見つけることができた。

写真:2003.5.10 豊科町
写真1(ハヤシミドリシジミ1)

写真2(ハヤシミドリシジミ2)

写真3(ミズイロオナガシジミ)


273「水鏡の風景」

残雪を刻んだアルプスを映す水田の水鏡は、安曇野を代表する風景のひとつである。

毎日、山を見上げてはいるものの、アルプスの隅々まで見渡せるような、澄んだ空気の日はなかなか来ない。今年はいささかあきらめの心境となっ ている。

写真1.2:2003.5.10 三郷村及木 写真3 :1989頃 豊科町
写真1(水鏡1)

写真2(水鏡2)

写真3(安曇野の田園風景)


274「シオヤトンボ」

山麓の池では、シオヤトンボとハラビロトンボ、クロスジギンヤンマが飛んでいた。

このうち、シオヤトンボの雌は単独で打水産卵を繰り返していた。写真を見ると、尾の周りの水が大きく跳ねているのが分かる。ホバーリング をしながら、水面を叩いて産卵するのはさぞや重労働に違いない。

写真:2003.5.22 堀金村
写真1(シオヤトンボ♂)

写真2(シオヤトンボ♀)

写真3(ハラビロトンボ)


275「ホタルカズラ」

「蛍」の名を刻むだけあって、ホタルカズラの花は、ほのかに光を放っているような美しい瑠璃色をしている。

図鑑によっては、花の基部の赤色を「蛍」の名の由来としているものもある。

以前は、水田の畦などに見かけたが、最近はめっきりと少なくなってしまった。

2003.5.22 堀金村
写真1(ホタルカズラ)


276「オオルリシジミ」

今年もオオルリシジミ発生の時期を迎え、官民一体となった「安曇野オオルリシジミ保護対策会議」の活動が始まっている。

当初、蝶マニアへの採集自粛要請やパトロールから始まった活動であるが、国営公園内へのサンクチュアリの設置や人工交配による増殖など、 活動内容の広がりと共にチョウの数も増えてきている。いずれも関係機関やメンバーの方々などの惜しみない力添えのお陰である。

しかし、クララに生みつけられた多くの卵はやがて孵化しても、無事終齢に至るものは少なく、見えない天敵に対する不安は増している。 また、卵や幼虫の付いたクララの花穂が摘み取られる被害も続いている。

保護活動は、幼虫の取り込みが終わる7月中旬まで続けられる。

写真1:オオルリシジミ♂
写真2:クモに捕らえられる
写真3:求愛行動だが、双方♂に見える
写真4:3D写真
 撮影はいずれも2003.5.25 安曇野

◇立体写真の見方 立体視は平行法で。左の写真は左眼で、右の写真は右目で凝視。二つの 写真が中央で合体すると飛び出して見えます
写真1(オオルリシジミ1)

写真2(オオルリシジミ2)

写真3(オオルリシジミ3)
写真3(オオルリシジミ、3D写真)


277「ミバエの仲間」

手の汗を舐めに来たのは、黒い波形の模様を翅に刻んだ小さなハエだった。眼は深い緑色をしていてなかなか綺麗である。ミバエの仲間の「ナ ミガタハマダラミバエ」と思われるが自信はない。

ミバエは「実蝿」である。果実に付くハエの意で、ウリミバエやミカンコミバエは農業害虫として悪名が高いが、人間の営みには関わりなく、 自然界にひっそりと暮らしている種の方が多いのではあるまいか。

手に乗ったミバエは、まったく逃げる気配はなく、その独特の表情をゆっくりと見せてくれた。

写真1:2002.6.2
写真2:2003.5.25
写真1(ナミガタハマダラミバエ1)

写真2(ナミガタハマダラミバエ2)

写真3(ナミガタハマダラミバエ3)


278「ヒメウラナミジャノメ」

ヒメウラナミジャノメは、身近なジャノメチョウとして知られる。
今回、止まっていた雌を撮影中、雄が飛んできて横に並んだと思ったら、瞬く間に交尾してしまった。

あまりの早業に、その瞬間は撮り逃してしまったが、交尾の姿はゆっくり撮影することができた。

それにしても、これだけ目玉が並ぶと、鳥たちも容易には近づかないのではないだろうか。

写真:2003.6.1 堀金村
写真1(ヒメウラナミジャノメ1)

写真2(ヒメウラナミジャノメ2)


279「眩しい虫たち」

この時期、林縁を歩くと葉上の甲虫たちがよく目に付く。ハムシやオトシブミたちが次々と顔を見せ、撮影するのに忙しいくらいだ。しかし、 うかつに近づくと、たちまち葉から転がり落ちてしまう。

ここに掲げた3種は、それぞれ独特の金属光沢を持つ美麗種たちである。彼らを、指輪かネックレスに付く宝石の替わりにあてがっても、決して 見劣りはしないと思うのは私だけであろうか。

写真1:セモンジンガサハムシ 2003.6.4
写真2:アオハムシダマシ交尾 2003.6.8
写真3:アカカネサルハムシ 2003.6.7
いずれも堀金村
写真1(セモンジンガサハムシ)

写真2(アオハムシダマシ)

写真2(アカカネサルハムシ)


280「ベニシタバ」

枝に成りきっている芋虫を見つけた。色つやもさることながら、小枝を剪定したような突起も付いていて、見事なカムフラージュというほかは ない。食痕がなければ、探し出すことは難しいだろう。

ヤナギを食べていたことから、ベニシタバの幼虫と推察された。下翅の紅色が美しいヤガ(夜蛾)の仲間である。

写真1.2:2003.6.6 堀金村
写真3 :2001.8.7 三郷村
写真1(ベニシタバ幼虫1)

写真2(ベニシタバ幼虫2)

写真3(ベニシタバ)



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