芋虫のつぶやき
VOL27:(261〜270)

261「常念坊」

4月22日、澄み切った空気の安曇野からは、北アルプスの隅々までくっきりと見渡すことができた

前日まで降り続いた雨で、高山の雪も一気に融け、残雪が描き出すコントラストが美かった。

常念坊の雪形は、すでに終盤の装いであった。

写真1.2:2003.4.22 三郷村
写真1(常念岳)

写真2(常念坊)


262「三郷昆虫クラブ始動」

昆虫クラブの第一回の野外活動が行われ、観察地に県営烏川緑地を選んだ。

歩き始めてまもなく、中学生のI君がヒメギフチョウを採集してくれた。真新しい翅の雄だ。「見せて見せて」と子どもたちが集まってくる。春 の女神の美しい斑紋を全員で観察し、チョウは放たれた。開園されているエリアでは初の確認とのことである。

途中から降雨となり、環境管理棟で小椋 緑さんのお話を聞く。園内で見つけた「自然の落し物」の話は何度聞いても面白い。猿の頭骨などを 見せられると、好奇心に満ちた視線が一気に集まる。これだから本物はすごい。

写真:2003.4.19 県営烏川緑地

追伸:4月24日、三郷昆虫クラブが、「信州豊かな環境づくり県民会議表彰」の栄に浴しました。関係する皆さんのお陰と深く感謝いたしま す。
写真1(三郷昆虫クラブ)

写真2(ヤナギ)


263「コヒオドシ産卵」

三郷村の黒沢上流は、昔から安定した高山蝶コヒオドシの発生地となっている。5月5日には、食草であるエゾイラクサへの産卵を目撃した。

母チョウは、1本の食草を選ぶと、少し飛んでは止まりなおす、葉の周囲を歩き回る、といった行動をとった。念入りに産卵する位置を決めて いるように見えた。この行動は発見から約5分ほど繰り返し行われた。

産卵に選んだのは中心付近の若葉で、一端位置が決まると、翅を閉じ、食草に尾端を繰り返し当てて産付。徐々に卵塊を作っていった。

産卵時間は午前11時36分から正午までの約24分間であった。卵数は塊となっているため正確には分からなかった。

写真1: 2003.5.1
 冬越し後の成虫 太陽の方向へ翅を広げる
写真2: 2003.5.5
 エゾイラクサへの産卵
写真3: 2003.5.5
 卵塊 食草と色が似ている
写真1(コヒオドシ)

写真2(コヒオドシ産卵)

写真3(コヒオドシ卵)


264「エンレイソウ」

花びらのあるエンレイソウを見つけた。本来この花には花弁がつかないのが一般的であるので、一見別の花のようだ。花びらは2枚しか出てお らず、形も不揃いであった。

エンレイソウは「延齢草」と書く。根はサポニンを含み有毒であるが、食あたりなどで、内容物を吐かせるときに使われるという。長寿の薬と は言えないようだ。

写真:2003.4.27 堀金村
写真1(エンレイソウ1)

写真2(エンレイソウ2)


265「畑の虫」

我が家の隣りには、自家用野菜と雑草を育てる小さな畑がある。春には、ハナダイコンやアブラナが花を咲かせ、チョウやハチたちが訪れている。

今年は、新顔のジュウシホシクビナガハムシを見つけた。その名の通り、14つの黒い斑紋をもつ美しいハムシで、アスパラガスの害虫としても知 られている。もともと、アスパラガス属の野生種であるキジカクシに寄生していたものが、アスパラガスの栽培化によって広がったとされる。

アスパラガスの頂芽付近に10匹ほどが群れていたが、その食欲は旺盛で、食害を受けた芽は無残な姿になっていた。

写真:
ナガメ・セイヨウミツバチ
2003.4.27 自宅
ジュウシホシクビナガハムシ
2003.5.10 
写真1(ナガメ)

写真2(セイヨウミツバチ)

写真2(ジュウシホシクビナガハムシ)


266「メマトイ」

本格的な虫のシーズンを迎え、心躍る山歩きであるが、数少ない憂鬱のひとつに、「メマトイ」がある。アウトドアなどで、目の玉の前を離れ ずに、しつこく飛び回る小さなハエに悩まされた経験は多くの人が持っていることだろう。

メマトイはショウジョウバエの仲間で、日本では三十数種が確認されている。なかには、ヒトの目に飛び込んで、線虫を寄生させる種もいるが 少数派とのこと。目に集まる理由はよく分からないらしい。

私の持っているデジカメは、レンズ部分が回転するので、メマトイの飛翔の撮影をしようとひらめいた。ところが、出来栄えは最低、おまけに、 いく度も発光させたストロボの残像が目に焼きついてしまい、「二度とやるまい!」と誓った次第である。

写真:2003.5.11 豊科町
写真1(メマトイ1)

写真2(メマトイ2)


267「コジャノメ」

この日出会ったチョウ類2種。

コジャノメが、ジャノメチョウ仲間の先陣をきって姿を現した。地味なチョウだが、トレードマークの「蛇の目模様」はよく目立つ。

コミスジは、3〜4匹が時おり絡み合いながら低く飛んでいた。いずれも瑞々しい翅をまとい、名の由来となった白い「三条」紋が陽光に輝い て眩しかった。

写真:2003.5.10 豊科町
写真1(コジャノメ)

写真2(コミスジ)


268「ムナグロ」

見慣れない鳥の一群が水田に降り立ち、歩きながら餌をついばんでいた。鳥の名はムナグロで、夏羽に衣替えすると、顔や胸が黒い羽に覆われる ためこの名がある。

信州野鳥の会の丸山隆さんによると、4月下旬から5月上旬にかけてシギ・チドリの仲間が少数ながら信州を通過するとのことで、今年は例年に なく数が少ないという。

身近な自然観察の楽しみがひとつ増えた。しばらくは、水田から目が離せない。

写真:2003.5.13 三郷村明盛
写真1(ムナグロ1)

写真2(ムナグロ2)


269「マルカメムシ」

この日確認したカメムシ2種

マルカメムシが、カシワの新枝の付け根に群がっていた。なんとも面白い形をしたカメムシである。手持ちの図鑑には、クズやハギなどのマメ 科植物に寄生する種とある。カシワにも寄生するということなのだろうか。

フトハサミツノカメムシは、ツノカメムシの中では非常に数が少ないとされる。この日見たのは雌であったが、艶のある鮮やかな緑色が美しかっ た。標本にすると別種の如く変色してしまうという。

2003.5.10 豊科町
写真1(マルカメムシ)

写真2(フトハサミカメムシ)


270「ヨツボシトンボ」

フトイもだいぶ伸びてきた役場前のビオトープ池だが、今日は思わぬ来客があった。初夏を代表するトンボのひとつ、ヨツボシトンボが飛来し ていたのだ。しかも2匹。

思えば、平成8年8月、トンボ研究の故曽根原今人先生の自宅の池からフトイを頂戴し、この池に植えたのも、先生の池で次々と羽化していた ヨツボシトンボに魅せられたからであった。

その後、この池にはクロスジギンヤンマやギンヤンマ、シオカラトンボなどの自然発生を見たが、あのヨツボシトンボだけは来ることがなかっ た。それだけに今日の彼らの来訪は素直に嬉しかった。

産卵してくれるだろうか。だとすれば来春の羽化がなんとも待ち遠しい。

写真:2003.5.16 三郷村役場
写真1(ヨツボシトンボ1)

写真2(ヨツボシトンボ2)

写真3(ビオトープ池)



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