芋虫のつぶやき
VOL24:(231〜240)

231「ゼフィルスの卵」

1mmに満たないゼフィルス(ミドリシジミの仲間)の越冬卵を探すのは、なかなか容易なことではない。種によって食樹も違うし、産卵する場所 を選ぶ習性も違う。何よりチョウの気持ちにならなければ、発見はおぼつかないだろう。私は、ゼフィルスの卵探しに推理小説の謎解きにも似 た面白さを感じている。

ウラミスジシジミは、卵の表面のトゲトゲが、ゼフィルスの中では最も細かく鋭い。コナラやミズナラの新芽に1卵〜複数卵が産付される。均 整がとれた美しい卵である。

ミズイロオナガシジミは、クヌギやコナラの枝の分岐点や幹のひだなどに1個ずつ産み付ける。もっともポピュラーなゼフィルスだが、最近は 少なくなったと感じている。独特の造形美を持つ卵である。

ウラゴマダラシジミは、ブナ科植物を好む種が多いゼフィルスのなかで、イボタノキ(モクセイ科)を食樹とし、また、UFOのような独特の形 の卵を複数かためて産むなど特徴が多い。

写真1:ウラミスジシジミ卵   
2003.2.1 小野沢
写真2:ミズイロオナガシジミ卵 
2003.2.9 松本市
写真3:ウラゴマダラシジミ卵  
2003.2.9 松本市
写真1(ウラミスジシジミ卵)

写真2(ミズイロオナガシジミ卵)

写真2(ウラゴマダラシジミ卵)


232「ダムと高山蝶」

昨年の5月、高山チョウきっての美麗種、クモマツマキチョウの撮影のため、久しぶりに大町の扇沢と白馬村の南俣を訪れた。

残念ながらチョウに会うことは叶わなかったが、気になる光景を目にした。それは、連なる砂防ダムや堰堤の姿であった。

堰堤と護岸がコンクリートで繋がり、ちょうど折箱の中のような状態となっているかつての生息場所は、ヤナギなどの木々が繁茂し、それが流 れの近くまで広がっていた。

クモマツマキチョウは、河川が氾濫したあとに先駆的に生える植物のミヤマハタザオやヤマガラシに卵を産む。これらの植物は、樹木が繁茂し たり、ヨモギなどの草が広がっただけで隅に追いやられてしまう。

こうした渓流環境の変化は、クモマツマキチョウにとって憂慮される事態を招いている。

写真1:2002.5.22
白馬村 南俣
写真2:2002.5.22
大町市 扇沢
写真1(砂防ダム)

写真2(繁茂するヤナギとクモマツマ)


233「ひどい芽」

N君と冬芽に宿るゼフィルス(ミドリシジミの仲間)の卵を探していたときのこと。クルミとおぼしき冬芽で卵を見つけた。クルミはオナガシ ジミの食樹として知られている。

ところが卵の形がオナガシジミらしくない。拡大してみるとなんとクヌギやコナラなどのブナ科につくミズイロオナガシジミ(芋虫231参照) であった。おそらく母チョウが食樹を誤って産み付けたものであろう。

それにしても、クルミの仲間のように見えるこの木の樹種がどうもはっきり判らない。葉痕はハート型で、サルの顔のような葉痕を残すオニグ ルミのそれとは明らかに違って見える。

とりあえず、記録になることは間違いない。卵の付いた枝を切り取ってN君に渡した。その後、彼は一生懸命撮影を繰り返していた。

翌日、N君から電話が入った。開口一番、「顔とか手とかかぶれてない?」と聞く。何のことか分からない。「昨日の卵の枝はウルシの仲間じ ゃないよねぇ‥」。「えっ‥」。

慌てて昨日の写真を見返した。そういえば、ヤマウルシに似ているような‥。

写真:2003.2.15 松本市
写真1(ミズイロオナガシジミ卵1)

写真2(ミズイロオナガシジミ卵2)


234「セツブンソウ」

毎年、春の進捗度を計る目安となっているのが、山麓のセツブンソウの群落である。今日は春めいた陽気となり、一面の開花を期待して現地を 訪れたが、少し時期尚早であった。

それでもあちらこちらで蕾がほころび始め、なかには開花しているものもあって、春の訪れを実感させてくれるには十分であった。

写真:2003.2.21 安曇野
写真1(セツブンソウ)

235「ネコヤナギ」

久しぶりに歩いた河原は、陽光が石や水に反射してまぶしく感じられた。川岸の一角には、ネコヤナギがやわらかそうな花穂(かすい)をたくさ んつけていた。

花穂の頭には、鱗片(りんぺん)の帽子をのせたままのものもかなりあった。愛らしいくもあるが、硬かった冬芽を弾くたくましい姿にも見える。

若い芽のなかには、芯の燃えるような色合いをしているものもあって、見ていて飽きなかった。

写真:2003.2.21 波田町
写真1(ネコヤナギ1)

写真2(ネコヤナギ2)

写真3(ネコヤナギ3)


236「ケショウヤナギ」

冬枯れした河原を見ながら、梓川に沿って車を走らせていていると、陽に照らされて白く光るケショウヤナギの群落に目を奪われた

この時期、幼木の樹皮は際立って白く、若い枝は赤く染まるため、火炎に包まれているように浮き立って見える。「化粧柳」の名は、実に的を 射た命名だと思う。

北海道の一部と、本州中部のごく限られた地域に生える珍しいヤナギ。ことに上高地の群落は有名で、梓川流域のそれは、上高地から種子が飛 来(もしくは流れ着いたか)したものが広がったらしい。

写真:2003.2.21 波田町
写真1(ケショウヤナギ1)

写真2(ケショウヤナギ2)


237「セツブンソウ」

山麓の墓地に咲くセツブンソウがだいぶ開花してきた。三分咲きくらいであろうか。

小さく白い花は、周囲の枯葉の反射と同化していて、近づいて見ないと咲いていることさえ見逃してしまいそうだ。 天気が続けば来週あたりが見ごろと思われる。

写真:2003.2.26 安曇野
写真1(セツブンソウ1)

写真2(セツブンソウ2)


238「春探し」

早春に咲く雑草二種。

ハコベはナデシコの仲間。花は、ウサギの耳のような形の、五枚の花びらから成っている。春の七草のひとつ。

オオイヌノフグリは、ゴマノハグサの仲間で、100年ほど前に欧州からやってきた帰化植物である。

2003.3.16 ハコベ      豊科町
2003.3.16 オオイヌノフグリ 堀金村
写真1(ハコベ)

写真2(オオイヌノフグリ)


239「仏の座」

犀川の土手でホトケノザの花が開き始めていた。4月になれば普通に見られる雑草ではあるが、この時期の小さな花はひときわ鮮やかに見える。

唇形の花は、何かの動物の顔を連想させるようでユーモラスだ。上の帽子のような花びらの内側には、花粉を付けた雄しべがのぞいている。

2003.3.16 豊科町
写真1(ホトケノザ1)

写真2(ホトケノザ2)


240「ナナホシテントウ」

犀川の土手には、若草が一斉に芽吹き、アブラムシを求めてか、たくさんのナナホシテントウが草の間を徘徊していた。

七つの黒点があることからこの名がついたテントウムシであるが、なかにはひどく乱れた斑紋の個体もあった。

まるで誰かが筆を加えたように見える。筆づかいには勢いがあって、遊び心を感じさせる。

2003.3.16 豊科町
写真1(ナナホシテントウ1)

写真2(ナナホシテントウ2)

写真3(ナナホシテントウ3)



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