221「黒沢山と古民家」
放射冷却により、この冬一番の冷え込みとなった。三郷村最高峰の黒沢山(標高2,051m)が、射光を浴びて両手を広げるような山容を現していた。
前に張り出た尾根を境に、二つの深い谷が切れ込んでいるのが見える。左が南黒沢、右が北黒沢で、いずれも梓川・三郷村の貴重な水源である。
手前の民家は本棟(ほんみね)造りと呼ばれる様式。幕末から明治にかけて建てられたものが多く、安曇野の原風景には欠かせない存在となって
いる。そのころ盛んだった養蚕のために、二階を蚕室として利用した家も多い。
2002.12.14 三郷村
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写真1(黒沢山大観)

222「猿が主役」
ここ数年、冬の安曇野の里山で主役を張るのは間違いなくサルである。最近は、烏川渓谷や国営公園の計画地でもたくさんの個体を見かけるよ
うになった。
冬場は食料を得ることが難しいので、針葉樹の樹皮や草木の芽などを探して食べる。今日も、雪が解けた南向きの土手の草を盛んに食べている
姿が観察できた。
気になるのは、人馴れしたサルたちである。最近も、諏訪地方の、人を襲うサルが全国ニュースを賑わせたばかりだが、烏川の宿泊施設「ほり
でーゆー」周辺の群れは、人の脇を悠然と行き来していて、人間を恐れる様子はまったくなかった。
写真1:2002.12.15 写真2:2002.12.14 いずれも堀金村
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写真1(猿1)
 写真2(猿2)

223「ヒメキマダラヒカゲの幼虫」
「芋つぶ217」で紹介した、ヒメキマダラヒカゲの2齢幼虫は、その後、屋外のシナノザサに移して様子を見ているが、依然として健在であ
る。
11月23日に約4.5oだった体長は、12月15日には約7oに伸び、新たな食痕も認められた。11月以降、気温の低い日が続いていたので、
この時期の摂食には驚いた。
発見当時8匹いた幼虫は7匹になっていて、体の色も白っぽくなったように見えた。
この先どうなるのか、しっかり見届けたいと思う。
写真1:新たな食痕 写真2:越冬する集団 2002.12.15 三郷村
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写真1(ヒメキマダラヒカゲ2齢幼虫1)
 写真2(ヒメキマダラヒカゲ2齢幼虫2)

224「ベニシジミ越冬幼虫」
ベニシジミの食草となるスイバやギシギシ(いずれもタデ科)は、ほ場整備後のあぜにもよく見られる。冬場はしおれた葉が地面にへばりついて
ロゼット状になっている。
見つかった越冬幼虫は、根際近くの若葉に潜んでいた。新しい食痕や糞があったことから、この時期でも摂食していることがうかがえる。
人家の庭にも生息しているので、手近な冬の自然観察対象としてお勧めしたい。
写真1:スイバの葉裏のベニシジミ越冬幼虫
写真2:食草が自生する野面 いずれも2002.12.15 堀金村
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写真1(ベニシジミ越冬幼虫)
 写真2(ベニシジミ越冬幼虫がいる斜面)

225「冬の雑木林」
あれほど繁っていた雑木林も、冬の間は空間がいっぱいだ。どこまでも遠慮なく分け入って歩けるのが嬉しい。林床まで差し込む冬の陽光が、雪や
落ち葉に照ってまぶしく見える。
ヤママユガの仲間の繭を見つけた。昨年作った物だから、すでに中は空である。ヤママユガは安曇野でもおなじみの天蚕(てんさん)のこと。飼育
にはクヌギが使われるが、自然状態ではコナラでもよく見かける。
ウスタビガはヤマカマス(山叺)とも呼ばれる。艶のある緑の繭が枯野に映えていた。
写真1:ヤママユガ 写真2:ヤママユガ越冬卵 写真3:ウスタビガ
いずれも2003.1.12豊科町
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写真1(ヤママユガの繭)
 写真2(ヤママユガの越冬卵)
 写真3(ウスタビガの繭)

226「冬の雑木林2」
コナラの冬芽近くにキジラミ(木虱)の仲間がとまっていた。体長は3oに満たないため、肉眼ではよく分からず、拡大してみてようやく、ウ
ンカに似たその虫の容姿を確認できた。指を近づけるとそそくさと移動する。真冬というのに元気のいいことだ。
クヌギカメムシは、樹皮にひも状の卵塊をつくる。この卵塊は寒天質で覆われていて、春、孵化した幼虫はまずこのゼリーを食べるのだという。
写真1:キジラミの一種 写真2:クヌギカメムシの卵塊
いずれも2003.1.12豊科町
協力 小野寺宏文さん
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写真1(キジラミの一種)
 写真2(クヌギカメムシの卵)

227「冬の雑木林3」
国チョウのオオムラサキの幼虫は、食樹であるエノキの根元で冬を越す。重なり合う落ち葉を丹念にめくっていくと、やがて2匹の幼虫を探し当
てた。
面白いことに、同じ枯葉に2・3匹の幼虫を見出すことが結構ある。連れ立って樹を降りるわけではないだろうから、積もった落ち葉の中で
も条件の良いものは限られているということだろう。
写真1:オオムラサキ越冬幼虫 2002.12.29 安曇野
写真2:カシワの冬芽近くに産付されたゼフィルス卵 2003.1.13 安曇野
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写真1(オオムラサキの越冬幼虫)
 写真2(ゼフ卵)

228「ヒヨドリジョウゴ」
林道わきにナスの仲間のヒヨドリジョウゴの実を見つけた。すでに葉はなく、赤い実が寄り添い宝石のように輝いていた。
ヒヨドリが好んでたべるので、鵯上戸(じょうご)と名づけられたという。 しかし、実は有毒で昔から生薬には利用されるものの、ヒヨドリは
食べないともいわれる。
冬の枯野にあって、この赤い実はまちがいなく鳥を誘っていると思うのだが‥
写真:2002.12.29 豊科町
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写真1(ヒヨドリジョウゴ)

229「冬芽2題」
烏川の支流のひとつ、小野沢をたどって歩いてみた。谷を渡る風は冷たく、一面が厳冬期のたたずまいであったが、目を凝らしてみると、春を
感じさせるものもいくつか見つけることができて心が和んだ。
緑色の新芽を膨らませていたのは、スイカズラ科のニワトコである。「青葉は目の薬」ということわざがあるが、瑞々しい新芽でも十分に目
を癒してくれた。
たくさんの丸い花芽を枝に散らしていたのは、クスノキ科のアブラチャン。早春を代表する黄色い花を見るのが待ち遠しい。
写真1:ニワトコ 写真2:アブラチャン いずれも2003.2.1 小野沢
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写真1(ニワトコノ芽)
 写真2(アブラチャン)

230「冬の花」
烏川の支流のひとつ、小野沢を歩いたときのこと。枯れ木に花が咲いたような光景に目を奪われた。
近づいてみると、つる性の植物が梢に巻きつき、綿毛を持つ種子がからみ合って花のように見えたのだった。
「冬の花」の正体は、キンポウゲ科のボタンヅル(もしくはコボタンヅル)。花に独特の芳香があるなじみの植物だが、冬の見事な変化には驚
かされた。
写真1.2:2003.2.1 小野沢
指導 飯沼冬彦・横内文人 先生
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写真1(ボタンヅル1)
 写真2(ボタンヅル2)

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