芋虫のつぶやき
VOL19:(181〜190)

181「目が回りそうな花」

オヤマボクチ(雄山火口)はアザミの仲間。名の由来は、葉に付く綿毛を、火打石の火を移し取る火口(ほくち)として利用したことによる。

花期は9〜10月。まだ蕾は硬かったが独特の造形美を見ることができた。

総苞片は鋭く尖り、幾重にも重なり合う。剣を隙間無く並べて侵入者を阻んでいるかのようである。そこに綿毛が巻きついているので、蕾が回 転しているように見えて面白い。

オヤマボクチは、山菜や蕎麦のつなぎとしても利用されている。

写真:2002.8.25 安曇村
写真1(オヤマボクチ1)

写真2(オヤマボクチ2)


182「ショウジョウトンボ」

「ショウジョウ」は、中国の想像上の動物「猩々」の意。酒好きで真っ赤な怪物とのこと。

ショウジョウトンボは、アカトンボの仲間ではないが、成熟した雄は見事に赤く染まる。

安曇野では、真っ赤なアカトンボ=ショウジョウトンボであったが、今年は、アカトンボの仲間きっての真っ赤なトンボ、「ネキトンボ」がいっ しょに飛んでいるため、一瞬、判断に迷うようになってしまった。

ネキトンボは胸に太い二条の線が入るが、ショウジョウトンボはほとんど無紋なので、よく見ると判別は容易である。

写真1:アキアカネ(上)とショウジョウトンボ(下) 2002.8.31 堀金村
写真2:ショウジョウトンボ♂ 
2002.8.31 堀金村
写真1(アキアカネとショウジョウトンボ)

写真2(ショウジョウトンボ♂)


183「12年目のご褒美」

昆虫クラブの活動が初めて表彰された。これまで、この活動が何かの表彰の対象になろうとは夢にも思わなかっただけに、支えてくださった皆 様や子どもたちと共に素直に喜びたい。

表彰までの経過を簡単にたどってみると、今年、(今回とは別の)ある表彰の候補に名前が挙がり、その条件の中に「過去の表彰暦」という項 目があった。

私は素直に「無し」と書いたのだが、先方では「村でもなんでもいいのですが、本当に一度も無いのですか」と親切に問い合わせてくる。でも 無いものは無いので仕方が無い。

ところが、先方は「今後のこともあるので」と、コカ・コーラ主催の環境教育賞へ推薦をしてくださった。そして、思いがけずも表彰状が私の 手元へ届いたのである。

思えば、コカ・コーラは、私が若い頃愛飲し、今の体型にも少なからず影響を与えた飲料であり、不思議な縁を感じている。

写真1:昆虫クラブの活動(寄生バチに寄生されたカレハガの仲間の幼虫)
2002.5.12 三郷村黒沢 写真2:チョウ類研究家の浜 栄一先生のお話を聞く 
1993.11.14 豊科町
写真1(寄生された幼虫)

写真2(浜栄一先生による指導)


184「ウスバキトンボ」

ウスバキトンボは、盆の頃祖先の魂を運んで来るとして、「精霊トンボ」「盆トンボ」などと言う地方がある。

安曇野でも6月下旬頃から目にするが、越冬は沖縄以南の地方ではないかと言われている。ひと月ほどで成虫になるほど生育が早く、世代を繰 り返しながら(または季節風に乗って)北進して来るという訳だ。

空中に群れて漂っていることが多く、ほとんど止まらない。なぜ集団で飛ぶのかよく分からないが、2年続けてまったく同じ場所で漂っていた こともある(2000〜2001三郷村)。

なんとも不思議な感じのするトンボなのである。

2002.8.31 堀金村
写真1(ウスバキトンボ1)

写真2(ウスバキトンボ2)


185「アカスジシロコケガ」

アカスジシロコケガは、2cmに満たない小さなガ。それでも、ライトトラップの白布に集まるガの中では、結構目立つほうかも知れない。

以前、島々谷の崖にへばり付いている粗雑な繭を見つけたが、それがどうやらこのガの繭であったようだ。針金細工のような繭は一体どのよう に作るのであろうか。また、とても防御に役立つようには見えない。

コケガの仲間は地衣類を食べるのでこの名がある。ガ類の食性の多様さには驚くばかりである。

写真1:成虫 2002.8.30 黒沢
写真2:アカスジシロコケガと思われる繭と蛹 
2002.6.9 島々谷
写真1(アカスジシロコケガ)

写真2(アカスジシロコケガ繭)


186「ムラサキイラガ」

今朝、同僚の女性職員が、「へんな物がついているけどなんでしょう?」と自宅からバラの枝を切って持ってきた。

見ると、扁平で円い幼虫が5匹、バラの葉裏についていた。刺されると激しい痛みを伴うイラガの仲間の、ムラサキイラガの幼虫であった。イラガ は「刺蛾」と書く。「サコケ」とも呼ばれ庭木に普通なので、被害にあった人も少なくないだろう。しかし、ムラサキイラガを図鑑を調べると、 「短刺毛はあるが刺さないようである」とある(日本産蛾類生態図鑑)。

本当に刺さないのだろうか。実際に確かめてから紹介しようと指を近づけてはみたものの、以前イラガに刺されて痛い思いをしたことが脳裏をかす めて、とうとう触れることはできなかった。

写真:2002.9.6 三郷村
写真1(ムラサキイラガ1)

写真2(ムラサキイラガ2)



187「キイロテントウ」

三郷村役場隣りの三柱神社で行ったライトトラップに、見慣れないテントウムシが飛んできた。

その名も「キイロテントウ」。体長は僅か5oほどだが、鮮やかな黄色が美しい。

このテントウムシは、ウドンコ病の菌を食べることで知られる。虫の世界では、「タデ食う虫」は至ってメジャーなほうなのかも知れない。

写真:2002.9.5 三郷村
写真1(キイロテントウ)


188「キンウワバ」

ヤガ(夜蛾)の仲間に(金上翅)と呼ばれる一群がいる。多くが前翅の一部に金色に輝く鱗粉(りんぷん)を持ち、なかには本物の金 箔を貼り付けたと思いたくなるような、見事な斑紋を持つものもある。

この日のライトトラップには2種類のキンウワバが飛来した。特にキクキンウワバの翅が美しいので何枚もシャッターを切ったのだが、ストロ ボをたくと金色が黒く沈んでしまいうまく写らない。

悪戦苦闘の末、金色らしく写ったものを掲載した。本物には遠く及ばないが、金色に光る雰囲気を感じ取っていただければ幸いである。

写真1:キクキンウワバ 
2002.9.8 烏川渓谷
写真2:ミツモンキンウワバ? 
2002.9.8 烏川渓谷
写真1(キクキンウワバ)

写真2(ミツモンキンウワバ?)


189「ツリフネソウ」

ツリフネソウの名は、その花の形を「帆をかけ船」または、「釣り船形の花器」に見立てたためと言われる。

15年ほど前までは、用水路(せぎ)沿いに普通に見ることができたが、ほとんどのせぎがコンクリート化されたため、平坦地で見かけることは 稀になった。

それでも山中の沢沿いなどではまだまだ健在で、キツリフネと隣り合って咲き競っている姿はなかなか美しい。

両種は、色のほかに花の後部の距に違いがある。ツリフネソウは距の先が巻かれるのに対し、キツリフネは曲がる程度なのである。

写真:上 ツリフネソウ
 下 キツリフネ 
2002.9.8 三郷村
写真1(ツリフネソウ)

写真2(キツリフネ)


190「キチョウ」

林道を車で下りてくる途中でのこと。一匹の黄色いチョウが車の気流に巻き込まれて舗装に落ちた。

車を止めて駆け寄ってみると、それはモンシロチョウと同じ仲間のキチョウであった。幸い外傷も無く飛べそうな様子であり安堵した。

キチョウは、ハギやネムノキなどのマメ科植物に付き、秋に多い。か弱い感じのするチョウであるが、成虫のまま厳しい冬に臨む。

写真:2002.9.8 三郷スカイライン
写真1(キチョウ)



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